プログラマーはまだ終わっちゃいない
コードを AI に任せて分かった、人にしかできない4つの仕事
「もうプログラマーは要らない」ってよく聞くよね。私はホラーゲームのコードを、ほぼ全部 AI に書いてもらってる。それでも毎日「ここは人じゃなきゃ無理だ」と思う瞬間がある。その瞬間を4つにまとめた。
この記事は 2026年11月2日時点の情報です2026年9月28日、夜中の0時52分。
いや最高にこわくて素晴らしいよ。こういう無機質な怖さは理想としていたもので、最高です👍
制作中のホラーゲームで、作り直しを頼んでいた敵のモデルを見たあとに打った言葉だ。夜中に1人で画面を見て、ちゃんと背筋が冷えた。絵文字までつけて、たぶんにやにやしてた。
で、ここでちょっと考えてほしい。このモデルを作ったのは AI。動かすコードを書いたのも AI。ゲームのエンジンの設定も、AI がやってる。じゃあ、私は何をしたのか。
こわいと決めたのは私だった
「もうプログラマーは要らない」って、ここ1年でほんとによく聞くようになった。私も、手でコードを書く時間はほぼゼロになった。それでも、毎日「ここは人じゃなきゃ無理だ」と思う瞬間がある。
このノートでは、その瞬間を4つにまとめる。結論を先に言うと、プログラマーはまだ終わっちゃいない。仕事の中身が、打つ人から決める人に変わっただけだ。
- コードを AI が書くようになっても、「合格を出す」「作らないものを決める」「遊んで確かめる」「速くなった気を疑う」の4つは人の仕事のまま
- 開発者の84%が AI を使っている・使う予定。でも精度を信頼しない人(46%)のほうが、信頼する人(33%)より多い
- これから必要なのは、速く打つ力より、良し悪しを言葉にして、確かめて、戻せる力
- 約600万ホラーゲームの12日間で Claude Code が書いた出力トークン
- 84%AI を使っている・使う予定の開発者(Stack Overflow 2025)
- 66%「ほぼ合ってるけど惜しい」に困っている開発者
- 19%AI ありで遅くなったのに、本人は20%速くなったと感じていた(2025年の研究)
いま AI がどこまで書いているか
先に、私の開発がどうなってるかを書いておく。
私はもともと JavaScript や Python は書ける。それがいまは、ホラーゲームも、落下ゲームも、このサイトも、ほぼ全部 AI に書いてもらってる。ホラーゲームのエンジン選びの12日間だけで、Claude Code が書き出した文字(出力トークン)は約600万。私が自分で打ったコードは、ほぼない。
世の中も同じ方向に動いてる。プログラマー向けの質問サイト Stack Overflow が2025年に開発者に聞いた調査では、84%が AI の道具を使っている、または使う予定と答えた。毎日使う人だけで47%。「コードを書く」作業は、59%の人が「一部を AI に任せている」と答えてる。
じゃあ人は要らなくなったのか。同じ調査には、こんな数字もある。
| 質問 | 答え |
|---|---|
| AI の答えの正確さを信頼している(とても+やや) | 33% |
| AI の答えの正確さを信頼していない(とても+やや) | 46% |
| いちばんの不満は「ほぼ合ってるけど、惜しい」答え | 66% |
| AI が書いたコードの手直しは、かえって時間がかかる | 45% |
使ってる人は多いのに、信じてる人は少ない。この「惜しい」を、最後に合格まで持っていくのが人の仕事なんだよね。私が毎日やってるのも、まさにそれだ。具体的に4つある。
1 合格を出すのは人
冒頭の「最高にこわい」の7時間ほど前、私は敵のモデルの作り直しを頼んでた。そのときの注文は、目の形と離れ具合、目の色、口角、口元の形、上半身の厚み、服と体のくっつき方、毛の生え方。7か所を1回で指定して、最後にこう書いた。
無機質な怖さでありたい。
AI は言われた7か所を、ちゃんと直してくる。でも「怖いかどうか」は、AI には分からない。怖さには点数がないから。目を少し離すと怖くなるのか、間抜けになるのか。最後は人間が見て、「これだ」と言うしかない。
逆の日もある。8月、落下ゲームの森の場面を AI に作り直してもらったとき、上がってきたものを見た私の返事は「あまりにもひどい」だった。4分後には、作り直す前に戻してた(くわしくはGit って何?に書いた)。AI は一生懸命786行を足して、902行を消した。でも、それを「ダメ」と言えるのも人だけだ。
おもしろいのは、AI の側もそれを分かってること。別の日、サイトの効果音を AI に作ってもらったら、作業の記録の最後にこう書いてあった。
聴感の人間レビューは未実施。
音が壊れてないかは、数字で全部確かめた。でも「いい音か」は、人が聴くまで決まらない。AI 自身が、ちゃんとそこで手を止めて、人に返してくる。
点数のないものは人が決める
2 作らないものを決めるのは人
AI は、頼めばいくらでも作る。疲れないし、文句も言わない。だからこそ、「それは作らなくていい」と止めるのが人の大事な仕事になる。
10月4日、ホラーゲームで AI が敵の歩くモーションを丁寧に作ってくれたとき、私はこう返した。
歩行の専用モーションはそこまでいらないかも。ていうのも、後ろ向いたときしか2秒間しかみることないし、めっちゃ凝ったものは次からいらないかな。
その18分後には、もっとはっきり言ってる。
カメラに映らないものはマジ適当にあつかっていい。カメラに映る部分だけ丁寧にすればいい。ユーザーは観測できない。
これ、自分で読み返しても良いこと言ってると思う(笑)。AI は「全部ちゃんと作る」が基本なので、放っておくと見えない所まで磨きはじめる。時間も、AI の使用量も、ゲームの重さも、そこで消えていく。
どこに力を入れて、どこを手を抜くか。遊ぶ人に何が見えるかを知ってるのは、作ってる人間だ。AI はゲームを遊んだことがないからね。
3 遊んで確かめるのは人
9月28日の夜には、AI にこう言ってる。
試験は俺がやるからいいよ。
いまも AI に確認を頼むときは、「ビルドが通るかだけ見て。ゲームのテストは持ち主がやる」と書き添えてる。コードが動くかどうかは AI が確かめられる。でも、遊んで面白いか、怖いか、理不尽じゃないかは、遊ばないと分からない。
実際、敵の動きの決まりを AI と詰めていたとき、AI の案は筋が通っていて、そのまま作れば正しく動くものだった。でも遊ぶ人になったつもりで頭の中で動かしてみると、どの敵も同じやり方で見破れちゃう。「ゲームが崩れてしまう」と言ったのは私だった。正しく動くのに、つまらない。この手の問題は、テストを何百回通しても見つからない。
ちなみにその50分後、AI と相談して直し方を決めて、「まあいっか!そうしよう。おもしろい」と言ってた。直すのはやっぱり AI が速い。
4 速くなった気を疑うのは人
最後の1つは、ちょっと耳が痛い話。
AI の研究をしている METR という団体が、2025年に実験をした。慣れたオープンソースの開発者16人に、本物の作業246件をしてもらって、AI を使っていい作業と使っちゃダメな作業にランダムに分けて、かかった時間を比べた。
結果は、AI を使ったほうが19%遅かった。
しかも、開発者たちは始める前に「24%速くなる」と予想してて、終わったあとも「20%速くなった」と感じてた。実際は遅くなってたのに、だ。
速くなった気がするだけかもしれない
大事な注意も書いておく。これは2025年はじめの AI での、16人の、慣れたリポジトリでの結果。METR 自身が、2026年2月に新しいデータを出して、この結果はもう今の AI の影響を表していないと注記してる。AI はこの1年で大きく変わったし、私の体感でも、今は明らかに速い。
それでも、この研究から持ち帰れることがある。体感と実際は、ずれる。AI が次々に何かを出してくると、進んでる気がする。でも、出てきたものを読んで、直して、また頼んで、を繰り返してるうちに、手で書いたほうが早かった、ってことは普通にありえる。
だから、ときどき立ち止まって「これ、本当に進んでる?」と疑う。それも人の仕事だ。
4つを支えるのは悩みを言葉にする力
ここまでの4つには、共通点がある。全部、自分の頭の中にあるものを、言葉にして AI に渡す仕事なんだよね。
いちばん分かりやすいのが、8月22日の落下ゲームの森の日だ。何度作っても森の場面がしっくりこなくて、19時22分、別の AI(Codex)に相談するための引き継ぎ書を Claude に頼んだ。そのときの私の書き込みがこれ。
今の俺の悩みは、本家のようなデザインの美しさがないこと 着地点が簡単すぎること 難しさと、本家の面白さを引き出すことの混乱 特に落下していて、統一感のあるデザイン性は欲しい。筒縛りをやめるべきなのか。
何がダメなのかを、4行で言えてる。これがあったから、AI は直す場所を探せた。
ただ、この日の結末は散々だった。54分後の20時16分。
codexで試したけどあいつあまりにもセンスなさすぎる。引継ぎ書だけつくってもらったから、これをしてより森をブラッシュアップできないか?
「あいつ」呼ばわりである(笑)。Codex が作り直した森は気に入らなくて、すぐに元に戻した。でも転んでもただでは起きなくて、Codex が書いた引き継ぎ書だけはもらって、Claude に渡して作り直しを続けた。
このやりとり、よく見ると AI 同士が直接話してるわけじゃない。間に立って、悩みを書いて、結果を見て、どっちの AI に何を頼むか決めてるのは人だ。現場監督みたいなものかもしれない。
引き継ぎ書は人の頭の外付け
ホラーゲームでは、これをもっと仕組みにした。敵を1体作るたびに、設計の決まりと「次にやること」を書いた引き継ぎ書と、敵ごとに見る点検リストを用意して、新しい会話は必ずそれを読ませてから始める。9月下旬から10月はじめで、敵6体ぶんの引き継ぎ書ができた。
AI は会話が変わると、前のことを覚えていない。だから「何が良くて、何がダメだったか」を覚えておくのは人の役目になる。引き継ぎ書は、その記憶を外に書き出したものだ。書くのは AI に手伝ってもらえるけど、「何を残すか」を決めるのは、やっぱり人だった。
よく聞かれること
コードが読めなくても作れる?
作れる。実際、ゲームエンジンもモデルづくりの道具も、私は AI に教わりながら触ってる。「blender全く初心者の質問でごめんだけど」から始まる質問を、普通にしてる。ただ、長く続けるなら、ざっくり読めるようになったほうがいい。AI が変なことをしたとき、気づけるから。
いちばん困るのは何?
「ほぼ合ってる」もの。完全に間違ってたらすぐ分かるけど、9割合ってると、残りの1割に気づかないまま進んでしまう。Stack Overflow の調査で66%の人が同じことに困ってるのを見て、ちょっと安心した(笑)。
AI はどう使い分けてる?
いまは Claude Code が中心。行き詰まったら、Codex や ChatGPT に「別の目」として見てもらうこともある。そのときも、引き継ぎ書を作って渡す。どの AI が出したものでも、最後に「合格」を出すのは私、というのは変わらない。
じゃあ仕事はどう変わったのか
4つを並べると、プログラマーの仕事は消えたんじゃなくて、場所が移ったのが分かる。私の場合は、こんな感じだ。
| 前(手で書いていたころ) | いま(AI に任せている) | |
|---|---|---|
| 時間を使うところ | コードを打つ、調べる、エラーを直す | 注文を書く、見て判断する、遊んで確かめる |
| 腕の見せどころ | 速く正しく書ける | 良し悪しを言葉にできる、どこで止めるか決められる |
| 失敗したとき | 自分で探して直す | 戻して、頼み方を変える(だから Git が要る) |
| 増えた仕事 | — | 引き継ぎ書を書く、AI の出したものを疑う |
手でコードを書く力は、無駄になったわけじゃない。AI が書いたコードを読んで「ここ変じゃない?」と気づけるのは、昔自分で書いてたからだ。読めると、疑える。疑えると、止められる。
このサイトのAI は仕事を奪う?では、なくなるのは「職業」より「作業」だ、という話を書いた。プログラマーで言えば、なくなりつつあるのは「打つ作業」。決める仕事は、むしろ増えてる。
これからプログラミングを始める人へ
「AI が書くなら、もう勉強しなくていい?」って聞かれたら、私はこう答える。全部覚えなくていい。でも、この3つは身につけたほうがいい。
- ざっくり読めること:一から書けなくていい。AI が書いたものを見て「何をしてるか」が分かれば、おかしい所に気づける
- 戻せること:AI に大きく任せる前にセーブする。Git を使えば、気に入らなかったら丸ごと戻せる。私はこれで何度も助かった
- 好みを言葉にできること:「無機質な怖さ」「カメラに映る所だけ丁寧に」みたいに、何が良くて何がダメかを短く言えると、AI の出すものが一気に変わる
3つ目がいちばん大事で、いちばん AI に任せられない。好みは、自分の中にしかないから。
あの夜中の0時52分、私は1行もコードを書いてない。でも、ゲームが「怖いゲーム」になったのは、あの1行の返事からだった。「最高です👍」と言えるものを知ってる人がいる限り、プログラマーはまだ終わっちゃいない。むしろ、ちょっと楽しくなってきたところだと思う。
このノートから持ち帰れること
プログラミングに限らず、AI に作業を任せる仕事ならどこでも使える考え方。
- 点数のない判断は、人が引き受ける怖さ、気持ちよさ、読みやすさ。数字で測れないものの合格は、AI ではなく人が出す。デザイン、文章、音、企画、ゲームの調整
- 「作らないもの」を先に決めるAI はいくらでも作る。見えない所・使わない所を先に伝えると、時間もお金も守れる。資料づくり、アプリの機能、動画の編集
- 動くかどうかと、良いかどうかは別に確かめるテストが通っても、つまらないことはある。最後は使う人の立場で触ってみる。アプリ、Web サイト、社内の仕組み
- 体感の「速くなった」を、ときどき測り直すAI があれこれ出してくると進んだ気がする。かかった時間と、直した回数を、たまに数える。AI を使った作業全般
- 自分の言葉で「何が良いか」を1行で言えるか
- 見えない所・使わない所に、時間をかけさせていないか
- 動くだけでなく、自分で触って(遊んで、読んで)確かめたか
- 気に入らなかったとき、戻せる状態で任せたか
- 手で書いた場合と比べて、本当に速くなっているか
やってみよう
記事と同じことを、手元の AI で試せる指示文です。ChatGPT・Gemini・Claude のどれでも使えます。AI は毎回ちがう答えを返すので、記事とまったく同じ条件にはなりませんが、考え方の練習にはしっかり使えます。実際にやってみてください。
練習1自分の「好み」を言葉にしてもらう
私は(例:ホラーゲーム/Web サイト/料理の写真)を作っています。 「良い」と思う例を3つ、「ダメ」と思う例を3つ挙げるので、私の好みを短い言葉(10文字くらい)で5つにまとめてください。 良い例:(例:…) ダメな例:(例:…) 最後に、その言葉を AI への注文にどう書き足せばいいか、例を1つ書いてください。
「無機質な怖さ」のような、短くて具体的な言葉が出てくるか。自分で読んで「そう、それ」と思えるか。
練習2作らなくていいものを洗い出す
次のものを作ろうとしています。 (例:スマホで遊ぶ3分のミニゲーム) 使う人から見えない部分、ほとんど使われない部分、最初は手を抜いてもいい部分を、理由つきで5つ挙げてください。逆に、絶対に手を抜いてはいけない部分も3つ挙げてください。
「カメラに映らない所は適当でいい」と同じ考え方になっているか。手を抜いてはいけない所が、使う人の目線になっているか。
出典・参考にした情報
- Stack Overflow「2025 Developer Survey: AI」(英語)
- METR「Measuring the Impact of Early-2025 AI on Experienced Open-Source Developer Productivity」(2025年7月10日、英語。2026年2月の更新の注記あり)
- ホラーゲーム・落下ゲーム・効果音の発言と時刻は、2026年8〜10月の作業記録から
いずれも 2026年10月23日に確認しました。下書きには AI を使っていますが、事実関係は自分で確かめてから公開しています。